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こんにちは。さっそくですがお伺いしたいのは、決して潤沢な予算があるわけではない御社が、なぜ積極的に高価なハイブリッド車両を投入し続けているかという点なのですが。
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たしかにおっしゃるとおり、液圧式の気動車が1億3000万円程度でそれなりの設備つきで購入できるのに対し、ハイブリッド気動車の価格は1億7500万から1億8500万。今回導入したキハF340形は1億8500万円だ。たしかに5000万円の差は大きいんだが、決してこれが「無駄に高い」とは思わんよ。
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燃費がいいとかそういうランニング面でのメリットですか?
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それもまあないではないが、実のところリッター2キロがリッター2.3キロになる程度でそこまで大きな差はないかな。飛ばし屋のM(運転士)がノッチ叩き込めば消し飛ぶ程度の差でしかないしな。やはり最大のメリットは、ハイブリッド車両は輸送力増強につながる、ということはたしかかな。
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輸送力増強? たしかにハイブリッド車両は大型車両ですが…
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いやいや、そういう意味ではないんよ。
ハイブリッド車両と気動車の違いな、エンジンを回すところまでは共通だけど、そこから先のシステムはまったく異なるわけよ。
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はい。液圧式の気動車はトルクコンバータを通ってドライブシャフトで台車に駆動力を伝達し、最後にベベルギアで回転方向を変えます。 |
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そう。これがハイブリッド気動車になると、エンジンの回転力を発電機に伝え、その電気を整流してインバータへ、そこからモータを回し駆動装置に伝える。この違いがすみさといちご鉄道という小規模な鉄道会社にとって輸送力増強のキーとなるのよ。 |
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メインテナンスフリー……。
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ご
明察。エンジンから先の部品、液圧式気動車であればすべてが重要部品だ。トルクコンバータのオイルシール、ドライブシャフトの自在継手、ベベルギアのかみ合わせ……いずれも入念な整備と時間が必要だよな。
一方、ハイブリッド気動車の場合は、発電機はブラシレスでメインテナンスフリー、インバータは自己診断機能つきで故障すればモジュール交換、モータはPMSMだからメインテナンスは一切不要。
しいて言うならWNギアカップリングのオイルシールとクラウニングくらいかな。しかしそれもユニット化すれば済む話というわけさ。
この違いが検査体制の最適化に大きく寄与し、オール液圧式の時代ではチーム全体で9両の車両を整備するのが精一杯だったが、現在では同じリソースで11両をメインテナンスできるのよ。さらに現在のこっている3両の液圧式気動車がハイブリッド車に置き換われば、12両の検査体制を作ることもできるな。まあ、そのくらい違う。
つまり、価格は1.5倍のハイブリッド気動車だけど、整備性で見れば3/4。したがって限られたりソースしか持たないウチではハイブリッド気動車こそが最適解という結論になるわけよ。
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なるほど。それは理解できました。しかし、そうだとわかっていても自治体の予算は年単位での算定のはず。一括で1億8500万円を捻出するのは難しいと思うのですが。
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それは私がお答えしましょう。いちご鉄道の車両投入の際は一旦北岡市と澄里町が共同出資した「いちご鉄道資産保有株式会社」が車両を購入し、これをいちご鉄道に貸し付けるカタチを採っています。最新のキハF340形の場合、年額1,850万円の10回払いでの支払いとなり、11年目以降はいちご鉄道に無償譲渡するという流れになっています。なお、キハF340形は2両投入予定ですが、さすがに年額3,900万円という額はいちご鉄道にとっても大きな負担となるため、うち1両は北岡市と澄里町が一定の割合ずつ出し合うことで負担を軽減します。
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2両とも自治体もちというわけには行かないのですか?
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資産管理会社は車両だけでなく、インフラも管理しています。そのお金の源泉は北岡市民と澄里町民の税金です。ローカル鉄道ゆえにある程度の税金の投入は仕方がありませんが、納税者に納得していただくためには鉄道会社にも応分の負担をお願いしなくてはなりません。
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ああ、お金の問題は確かにシビアですもんね。ところで私がたとえば市民団体で多少の知識を持っているのなら、ハイブリッド気動車は高価なんだから、今度JR東日本/JR北海道が投入する電気式気動車を導入しろとか提案すると思いますが。
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それももちろん検討課題です。そもそもハイブリッド気動車導入の理由のひとつに、技術進化に対する柔軟性の高さというものがありました。仮にハイブリッド技術がスタンダードにならなくとも、容易に方向転換できるように作られているのがいちご鉄道のフリートです。
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柔軟性?
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