1973年に登場した700形は、価格を押さえた経済車として成長期のストリームラインを支えてきました。しかし軽量構造ゆえに冷房化困難だったこと、応荷重装置がないうえにTを1両余計にぶら下げているため、性能的にもだんだん対応できなくなってきました。 ストリームラインでは700形の後継として、現代の水準を満たしたラッシュ専用車両を企画します。これが800形で、4編成24両が作られました。 800形は経済性を何よりも重きにおいているため、制御器を除く補助電源機器や台車、MB-3020モータ、ギアカップリングなどはSL-3のものを流用。制御器だけはさすがにオシドリ方式の厄介なものを流用するわけにもいかず、ABFM-148-15RDVHを新調しました。型番からわかる通り回生ブレーキを装備。すなわち界磁位相制御となりました。三菱電機が初期直巻車の省エネ改造向けに提案したシステムの宣伝も兼ねて採用したと言われていますが、ストリームラインで採用したのは800形・810形のみ。界磁位相制御は800形のように列車密度が高い区間を走る分には有用な方式ですが、810形のように小磯線や伊勢原ローカルの運用が中心だとあまり回生ブレーキの恩恵はなく、費用対効果を考え従来どおりのABFM+発電ブレーキが有利、普通電車用に使えばCFM制御器やMAP制御器よりも価格面で有利ですが、いかんせん界磁位相制御は起動・停止を繰り返す運行には向いていません。一方新造車両用では、VVVFインバータ制御、つまりMAP制御器が三菱電機のイチオシであり、三菱電機としては新造車はVVVF、旧型車は界磁位相制御に改造し、省エネ効果を高めましょうという目論見を持っていたといえましょう。 さて、800形はギア比4.21で低速の加速力は6両編成オールMとはいえ、ストリームラインのランカーブに乗せるには苦しいものがありました。そこで性能を少しでも向上させるため、また、台枠強度の問題から冷房かができない800形の車体更新への含みも合わせ、軽合金ボディとすることになりました。すなわち鋼体重量を3トン浮かせられれば冷房を搭載できるという考え方です。そうなるとステンレスよりもアルミが有利、ということでアルミボディを採用。部材の省略や軽量化で鋼鉄製ボディよりも4割がた、3.5トンの軽量化を達成し、cM車で33トンまで軽くできました。 さらに低速域での加速を助けるため、界磁位相制御にあるまじき数の抵抗器をぶら下げて直列24段・並列20段の超多段制御を採用。直並列の渡りで多少のドンつきがあるものの、抵抗制御の車両としてはかなりスムースに起動・加速するようになりました。 このように軽量化とシステムの最適化を進めた結果、冷房搭載車ながら54キロまでの加速力3.3キロ/秒を確保。弱め界磁25%、補償巻線なしで最高速度は120キロ以上と申し分ない性能となりました。なぜ補償巻線を巻かなかったかというのも、700形のボディを軽量化して再利用する計画があったためです。12〜24両程度ならともかく、80両近い車両のモータに補償巻線を巻くのは手間として得策ではありません。 それにしても弱め界磁25%を特別な対策なしで対応できるMB-3020モータは実に優秀なモータです。もっとも、約780キロという重さだけはなんともしがたいのですが、この重さ(電機子径の大きさ)こそが比類なき低速トルクの源なので難しいところです。 ブレーキは回生ブレーキを常用するということでMBS-R。デジタルブレーキです。しかしギア比が低く回生ブレーキが40キロあたりで失効してしまうため、空気ブレーキは両抱き鋳鉄ブレーキを採用。低速域での確実なブレーキを保証します。 SL-3のKD-7台車を改良したKD-7Bを履く800形。決して乗り心地が悪いわけではありませんがボルスタが特殊なためKD-63への振替ができず、誕生から60年を超えた現在もKD-7B台車を履いて、時速110キロで疾走しています。 ■禍根を残した台車
■イニシャルコストよりもライフサイクルコスト
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